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私の読書日記2010<No.14>

book

秘すれば花 
著者:渡辺淳一
出版社:サンマーク出版

室町時代に能楽を大成した世阿弥が書いた芸論書「風姿花伝」。
世阿弥はこの書の中で、稽古のありようや上達法など<能の奥儀>を指南していますが、それだけにとどまらず、人間としての理想的な生き方・人生観も示しています。

作家・渡辺淳一氏は以前からこの「風姿花伝」を人生の指針として愛読してきたということで、能に無縁の現代人にも人間の才能やそれを生かす修行のあり方などをわかりやすく伝えたいとの思いから、世阿弥の「風姿花伝」を自分なりに解釈した本書「秘すれば花」を書いたそうです。

「失楽園」「化粧」「ひとひらの雪」など濃厚な恋愛小説を得意とする渡辺淳一氏がこんなジャンルの本も書く・・というのもちょっと意外な感じですが、さすがに観察眼が鋭い作家だけあって、単なる芸能論にとどまらず、能の面(おもて)に秘めた人間の業や情念など生々しい感情を描いているあたりは、彼の本領を発揮しているなあという印象を受けました。

稽古や修行についての心構えや教えについては、その道を極めるということで現代の芸事やスポーツのジャンルにとどまらず、仕事にも
通用する内容で、とても参考になる言葉が多かったです。
例えば、私が印象深かったのは、
・「稽古は強かれ、情識は無かれ」
(努力は懸命に、しかし自分勝手では効果がない)
・「ただ花は、見る人の心に珍しきが花なり」
(相手に新鮮な珍しさを与えるもの、それこそが花で、珍しさが命である)
・「おもしろき所ばかりをたしなめば、などか花無かるべき」
(ものごとを完全にマスターしたうえでの余裕の部分に、その人の花が咲く)
・「時の間にも、男時、女時とてあるべし」
(時の流れの中には、つきのある時と、無い時があることを知るべきである)

世阿弥の「風姿花伝」には、度々「花」という言葉が出てきますが、なかでも、有名なのが本書のタイトルにもなった「秘すれば花なり。
秘せずば花なるべからず」。意味は<秘することによって、花の美しさは一段と映える>。つまり、何でもあけっぴろげに見せるのではなく、秘めておくことによって他人に驚きや感動を与えることが出来る。芸事の世界の秘伝をはじめ、人の生き方にも通用するとのこと。

ある一定の年齢になったら、人生論としても楽しめる本でしょうね。

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