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志乃ちゃんは自分の名前が言えない

押見修造の同名人気コミックの映画化作品だ。監督はこの作品でデビューした湯浅弘章がメガホンを取り、脚本は「百円の恋」で日本アカデミー賞脚本賞を獲得した足立紳が担当した切ない青春物となっている作品である。

 

高校に進学した志乃(南沙良)は、初登校の朝、鏡の前で口を動かしている。
実は志乃は極端な緊張癖であり、人前で喋ろうとすると口がもつれて自分の名前すらうまく言えないのだ。クラスの自己紹介で志乃の順番がくる。朝鏡の前であれほど練習したのに、猛烈に緊張した志乃は言葉をしぼり出せず自分の名前を言うのも出来ない。クラス中がシーンとなる。やっと長い時間をかけ「志乃」という名前だけ言うと、菊池(萩原利久)というその場の空気をよめない生徒から大声で冷やかされた。初顔合わせの場で恥をかいた志乃の、友達も出来ずひとりぽっちの寂しい高校生活がはじまった。そんな寂しい心の志乃は、ある日やはり孤高を守る加代(蒔田彩珠)とひょんな事から知り合う。ギターをよく弾きミュージシャンを希望する加代も心に悩みを抱えていた。加代は極端な音痴だったのだ。加代の家に誘われた志乃のきれいな声に、加代はふたりで組んで音楽をやろうと誘う。はじめて他人から認められた志乃はコンビを組むことに同意する。悩みを抱えたふたりの高校の同級生たちが出歩かないような野外の場所での音楽の練習がはじまった。志乃はうれしい!やっと出会えた友達!ふたりの心は急速につながる。しかし、ある場所でいちばん出会いたくない菊池に出会ってしまう。実は空気がよめない菊池も誰からも相手にされず悩んでいた。菊池はふたりのメンバーに自分も加えて欲しいと頼み込む。加代は同意する。ふたりだけの世界に没頭していた志乃は、自分に恥をかかせた菊池を許せない。そしてそれは志乃と加代の間にも微妙な亀裂を生むことになるのだった・・・。

 

いちばん多感な年頃に、自分では致命的と考える欠陥を抱えたふたりの女子高生の友情と亀裂を描きながら、まだ未熟な心の痛々しいほどの切なさをえぐるこの作品は、ラストの志乃の叫びを通して、そんな私たちを認めて欲しいという心からの願いをよく具現した内容となっている。ほぼ三人だけに絞った内容を湯浅監督はロケーション場面を多用して、この重いテーマを出来る限り中和しようとしているのだ。
ぼくのチケット代は、2000円出してもいい作品でした。
星印は、4ッさしあげます。


[ 4 点(5点満点)・ 2000 円(1800円基準)] 5点満点中4点 2000円
衛藤賢史のシネマ教室について…

“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。

星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)

【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動

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