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鑑定士と顔のない依頼人

世界的な美術オークションを一手に仕切る美術鑑定士の権威と名声を知る作品である。
作品の真贋を一瞬で見分け、2~3分で億単位の金額を取引きさせるプロ中のプロの腕前に魅了されながら進行するこの作品は、同時にひとりの蠱惑的な謎の女性の登場によって微妙に狂っていくミステリアスな内容を内包し、耽美的で知的な世界へと誘う大人の映画となっている。
初老の天才鑑定士にして一流のオークショニアであるヴァージル・オールドマンは、ある資産家の両親が遺した絵画や家具を鑑定して欲しいという依頼を受ける。
気難しい性格のオールドマンは、依頼人の女性が姿を見せないままの頼みに立腹し、相手にしないが、再三の要望に興味をひかれ屋敷を訪ねる。荒れ果てた屋敷の床に転がっていた謎の歯車の一部を持ち帰り美術品修復の天才ロバートに調べさせると、18Cの機械人形の一部だと判明する。もし本物なら莫大な価値があるものでオールドマンは、がぜんこの屋敷の所蔵品に興味を持ち、姿を現さない謎の女性クレアに会おうとする。
他人とうまく付き合うことのできないクレアは、会うことを拒むが辛抱強く対応するオールドマンに心を許し姿を現す。<広場恐怖症>という奇病のクレアは15才から27才の今日まで人と接触したことがない。しかしオールドマンは一目見た瞬間からクレアに魅かれる。肖像画の女性像をマニアックに愛し生身の女性に恋したことのないオールドマンは独身を通していたが、<デューラーのエッチングのような蒼白な顔>のクレアにはじめて理想の女性を見て激しく心を動かされたのだ。しだいにオールドマンに心を許すクレア。謎の歯車の断片が屋敷で次々と発見され<ヴァーカンソン>の機械カラクリ人形だと判明する。オールドマンは、今や鑑定士の誇りとクレアとの愛の中で全力をあげてクレアを保護しようと決心するのだが・・・。
数々の美術品を鑑定士の鋭い目を通して紹介し、芸術への知的好奇心を十分に堪能させてくれるゴージャスな雰囲気の内容。そして謎の蠱惑的な女性の出現からオールドマンが体験するミステリアスな世界に一気に引っ張り込むトルナトーレの巧みな演出で、観客であるぼくらは美と愛の耽美的世界の中をオールドマンと共にさ迷う作品となっているのだ。
ぼくのチケット代は2,200円を出してもいいと思う作品でした。
星印は、3つ半差し上げます。


[ 3.5 点(5点満点)・ 2200 円(1800円基準)] 5点満点中3.5点 2200円
衛藤賢史のシネマ教室について…

“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。

星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)

【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動

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