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駆込み女と駆出し男

久しぶりに監督・脚本・撮影・美術・衣装・俳優などの映画に対する気迫、意気込みの合致した作品に出会った。大人の映画を見たよろこび、楽しさを、心から堪能できる娯楽作品となっている。本年度のベスト5に入る作品となっている!
作品の舞台は、江戸時代末期の天保12年。世にいう老中・水野忠邦の<天保の改革>による厳しい質素倹約の令により、庶民・武士を問わずあまりの窮屈さに悲鳴をあげた時代。日本橋唐物問屋・堀切屋の妾お吟と、七里浜にある浜鉄の女房で鉄練り職人のじょごが家を捨て、鎌倉にある幕府公許の女人駆込み寺である東慶寺に逃げ込んできた。
同じ頃、駆出しの戯作者で医師見習いの中村信次郎も、女義太夫の芸能者が質素倹約令に違反したとして数珠繋ぎにされ引かれていくのを、思わず軽口で批判したため追われる身となり、東慶寺の御用宿である柏屋の主人・源兵衛(実は女性で信次郎の叔母)のところに転がり込んだ。救いを求め縁切り寺の東慶寺に入門することを望む女たちの身柄をまず預かり、聞き取り調査をする仕事を受け持つ柏屋で、叔母・源兵衛の手伝いをすることになった信次郎は、お吟とじょごの事情を聞く役をする。お吟の聡明さ鉄火さ、じょごの向上心に感銘を受け、鉄練りで負ったじょごの顔の傷を手当てしながら信次郎はじょごに好意を持ち始めるが、ふたりは東慶寺の主である法秀尼の許可をもらい、2年間の男子禁制の寺修行の生活に入ることになる。
厳しい修行の明け暮れにもめげず励むお吟とじょごだが、お吟が病気になってしまう。法秀尼は特別に医者である信次郎を寺に入れ、お吟の治療を命じる。そしてお吟を大切に思うじょごは、信次郎から学んだ薬草の知識でお吟の薬を調達しながら、寺修行でみるみる内に知性的な女性に変貌していくが、柏屋ではお吟やじょごをはじめ、その他の駆込み女たちの原因を作った男たちが押しかけ、信次郎たち柏屋の応対はてんやわんやの有様。だが次第に暗い影が東慶寺、柏屋を包み込むも、知恵者の信次郎も負けじと動き始めるのだが・・・。
原田監督の切れのいい演出、原田哲夫の重厚な時代劇セットの作り、衣装の宮本まさ江の斬新なデザインなど、製作スタッフのすばらしい仕事ぶりに、観客である我々は往年の時代劇を彷彿させる雰囲気を感じることになろう。
また信次郎を演じる大泉洋の滑舌の良さ、思わず笑わせてくれるユーモアあふれる演技、お吟の満島ひかりの情の深い演技、戸田恵梨香の逆境に負けない強い意志を持ちながら愛らしいじょごの演技、そして源兵衛の樹木希林の演技!大満足の作品でした!
ぼくのチケット代、2,500円を出してもいいと思う作品でした。
星印は、5つ差し上げます。


[ 5 点(5点満点)・ 2500 円(1800円基準)] 5点満点中5点 2500円
衛藤賢史のシネマ教室について…

“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。

星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)

【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動

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