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地震の影響のはなし

先月中旬から始まった一連の地震の被災者の皆さまには、改めまして心からお見舞いを申し上げます。

今回は、この地震が当地の経済に与える影響について、今の段階で分かる範囲でお話しさせて頂きたいと思います。

結論から先に言えば、「観光面を中心に、熊本地震の影響がみられており、全体として弱めの動きとなっている」ということで、日銀大分支店では、3か月に一回公表している景気の判断を、今週月曜日に引き下げたところです。

個別にみると、製造業では、一部で、熊本県内の企業との取引に生産体制が依存している会社があり、地震発生直後は生産停止なども見られましたが、東日本大震災の教訓もあったことで調達先の分散などの様々な工夫をしていた結果、それほど大きな影響が出ずに生産再開できているようです。また、県内の製造現場自体が受けた被害はあまり大きくなかった模様です。

非製造業では、旅館などの宿泊施設の一部で被害があり、臨時休業せざるを得なかった先もありますが、多くの先では比較的短期間に営業再開に漕ぎ着け、観光客の受入れ態勢を整えた先が多かったようです。

ただし、余震に対する警戒が必要な状況が続いていることから、国内外からの観光客の数が大きく落ち込んでおり、観光関連の業種は痛手を蒙っています。

この間、県民による消費については、震災関連商品の一時的な売れ行き好調などもありましたが、マインドの落ち込みから消費額の全体は落ち込んでいます。一部には、被災地の支援が忙しくなって宴会をキャンセルしたり、宴会を自粛するような動きもあったようですね。

住宅投資や公共投資については、幸いにして県内では建物や道路等の公共施設の被害が少ない状態でしたので、復興需要という観点からはあまり出てくることが期待できず、景気に対してプラスの効果はあまり望めそうにありません。

雇用については、一部で求人を取りやめる動きもあるようですが、影響はそれほど大きくないかもしれません。

したがいまして、全体としては、観光に対する影響が大きくマイナス、消費に対する影響のマイナスと震災関連商品の売り上げのプラスを合わせて中規模のマイナス、それ以外の項目はプラスにしてもマイナスにしても小さな影響、といった整理になるかと思います。やはり、観光に対する大きなマイナスの効果が一番大きなものになると思います。

景気の観点からは、これまで、中国を含む新興国経済の減速の影響で素材産業が振るわず、軽自動車の売り上げも落ち込んでいるなど、製造業がパッとしない中で、観光が景気を下支えする構造でしたので、観光の落ち込みは痛い状況です。また、タイミングとしても、観光業にとって非常に重要なゴールデンウィークにもろに影響が出ましたので、かなりの痛手だと思います。さらに、観光業界にとりましては、昨年のディスティネーション・キャンペーンの経験を活かして盛り上げていこうという機運がありましたので、その観点からも残念ですね。

このように、地震の景気に与える影響は、観光業が最も強く受けると思いましたので、日銀大分支店では、月曜日の景気判断と同じタイミングで、「熊本地震による大分県の観光面への影響について」という特別調査レポートを作成して公表しました。この中では、2007年の能登半島地震や、2011年の東日本大震災の後の宿泊客数の変化と同じような変化が大分県の宿泊客の数に現れた場合の効果を試算してみました。具体的には、国内客が能登半島地震の後と同じ減り方、海外客が東日本大震災の後と同じ減り方をするとすると、観光客の人数では前年比17.4%、観光消費額は前年比16.4%、116億円くらいの減少になるとの結果が出ました。

「今後も最低2ヵ月程度は震度6弱以上の揺れに見舞われることも否定できない」と地震調査委員会が言っており、警戒が必要な状況は続きますので、しばらくは観光客が本格的に戻ってくることは期待しにくいかもしれませんね。一方で、多くの方が「風評被害」と言うように、これまでの地震報道が、被害が大きいところの映像ばかりを繰り返し伝えるようなものであったために、熊本県と大分県の全域が大きな被害を被っていると、特に県外や海外で誤解されていると思います。もう少しバランスの取れた報道をして貰えないのかなと思ってしまいます。県内の被災状況が正確に認識されていないことによって、県外客が必要以上に大分県への観光に慎重になっているのであれば、まさに「風評被害」なのだと思います。

このような状況の中で、被災状況を正確に伝えるだけで観光客が大幅に戻ってくるとは考え難いですので、個人的には、「観光に訪れることが最大の応援です」ということを県民が県外の知り合い等に積極的にアピールしていくのがよいのではないかと思います。また、こうしたアピールは、海外や遠隔地よりは、まずは県内、そして次は九州、というように、比較的近くにいる人達に的を絞るのがよいのではないでしょうか。

さらに、観光地では、中核的なファンは応援のために宿泊に来ているとも聞きます。この際、苦しいときに助けてくれる本当のファン層が誰なのかと言うことを再確認し、今後中心的に呼び込んでいくべき客層などの戦略を練り直す機会かもしれませんね。41年前の由布院が大分県中部地震をきっかけにブランド戦略を成功させたように、この「ピンチ」を、将来の大分県観光に向けて「チャンス」に転化していきたいものだと思います。

(おわり)