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消費増税延期のはなし

消費税率の8%から10%への引き上げが、予定されていた2017年4月から、2年半先の2019年10月からということになりました。

世界経済の危機回避のため、ということですし、わが国の景気に悪影響を与えないため、ということです。この点に関しては、専門家から様々な意見が聞かれており、人によって判断が分かれるところなのかもしれません。皆さんは如何でしょうか?「消費税率が10%にならなくてよかった」という感想なのではないですか?

今回は、本件の是非そのものではなく、それを判断する際に考えるべき点を幾つかお話しできればと思います。

まず、そもそも現時点でわが国の財政は大幅な赤字であることは、忘れてはならないと思います。今年度予算でみれば、今年度の歳入約97兆円のうち、約36%にあたる34兆円は国債を発行するかたちで借入れを行って賄っている部分です。過去の借入れの累計は1,000兆円程度あり、これに今年一年で新たに借金が34兆円加わることになります。

消費税は1%で約2兆円の税収に繋がると言われていますので、消費税だけでこの赤字を埋めようとすると、17%の引上げが必要であり、消費税率は今の8%に17%を足して、25%にする必要がある計算になります。

勿論、さすがに一気に25%にまで引き上げるのは影響が大き過ぎるので、このようなことはやるべきではないと思いますが、今の毎年の赤字を埋めるだけでも、このような規模の引き上げが必要になるという目安としてお話ししています。因みに、海外では20%を超えるような消費税率はよくある水準ですので、これが全く不可能というわけでもないと思います。

次に、増税の延期には世代間でどのように負担を分担すべきなのか、という論点があることにも注意が必要だと思います。今回2%の引き上げを2年半先延ばししますので、4兆円掛ける2.5で10兆円の歳入がなくなることになります。返す借金の総額が変わらないとすると、この分はいずれどこかで徴収しなければならないことになります。話を単純にするために、2年半後以降に全てを所得税で徴収するとしましょう。また、話を単純にするために、村津さんが今58歳、飯倉さんが20歳の大学生だとします。2年半後には村津さんが60歳で定年退職しており、飯倉さんが大学を卒業して就職しているとします。そうすると、2年半後以降に所得税だけで先程の10兆円を徴収しようとすると、これを払うのは全て飯倉さんということになります。今消費税で集めようとすれば飯倉さんも村津さんも負担することになります。すなわち、先延ばしをすると若い人の負担がどんどん増えていくことになります。

今、わが国は高齢化が進んでいますので、若い人よりは高齢者の方が、多数決をすると多いわけですので、高齢者の意見の方が通り易くなっています。今年から選挙権を得られる年齢が18歳に引き下げられますので、投票できる若い人の人数が増えますので、このような世代間でどのように負担を分かち合っていくかを決めなければならないような問題との関係では、非常に重要な変更なのだと思います。若い人達にも是非、これらの問題を真剣に考えて貰い、投票行動に繋げていって貰いたいと思います。

なお、これは完全に個人的な意見になりますが、増税の先延ばしをすることで得をすることになる我々大人や高齢者は、本当は、責任ある行動をするのであれば、今のうちに財政赤字を減らし、将来の若い人達、あるいは下手をしたらまだ生まれていない人達、の負担を増やさないようにしておくことが必要なのではないでしょうか。

当然、増税となれば負担が増えますので、できれば避けたいわけですが、一方で、現在のような社会福祉や公共投資を減らすことも難しいのではないでしょうか。

財政赤字を減らそうと思えば、基本的には4つしか方法はありません。一つ目は歳入を増やすこと、二つ目は歳出を減らすこと、三つ目はインフレにして債務負担を減らすこと。物価水準が現在の100倍になれば、債務は実質今の100分の一になるわけです。ただし、日銀はインフレを防ぐことを目的に設立されている組織なので、私の立場からはこれは許すわけにはいきません。日銀としてはそうならないよう、全力で行動することになります。そして4つ目は債務を踏み倒すこと。これは、政府としては絶対避けたいと思うでしょう。そうすると、基本的には最初の2つの方法、場合によってはその組み合わせということもあると思いますが、これらでやっていくしかないのだと思います。

気が重い話で申し訳ないですが、増税のタイミングを考える場合、世代間での負担の分担という観点も意識する必要があるのではないでしょうか。

このように考えてくると、最近、ニュースなどで出てくる「パナマ文書」の話、つまり、租税を回避する人達の話が出てきますが、こういうものもどうなのかな、と思ってしまいます。法律的には許されていても、やはり、自分が住んでいたり経済活動を行っている国には、きちんと税金を納めるべき、ということなのだと思います。

(終わり)