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県内企業のワーク・ライフ・バランスの取組について

今回は、大銀経済経営研究所の野上 諭さんにご出演頂きました。

 

■まず、はじめに、大分県内の最新経済動向について教えて下さい。

県内経済は、熊本地震による影響も続いており、一部に足踏み感がみられているといった状況にあります。

項目別にみますと、雇用動向は引き続き高水準で推移しており、製造業についても持ち直しの動きがみられます。一方、個人消費は一部弱含みの動きがあるほか、観光面では引き続き熊本地震の影響が続いています。7月より九州観光を支援する旅行券などの支援策が実施されており、早期の復興に繋がることが期待されます。

 

■さて、今日は県内企業のワーク・ライフ・バランスの取組についてお話をして頂きます。まず、ワーク・ライフ・バランスとは?

人口減少社会に突入し、少子高齢化、労働力人口の減少という人口構造の変化によるさまざまな社会的課題がある中で、多様な働き方・生き方が選択できる社会をめざし、企業経営者と働く側の両方で、「ワーク・ライフ・バランス(以下WLB)」への関心が高まってきています。

WLBとは、「仕事と生活の調和」を意味する言葉で、経済界や労働界、政府、地方自治体が協力し推進している雇用政策の一つです。この取組が目指すべき姿として「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育ての時期、中高年の時期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」を掲げています。具体的には、「就労による経済的自立が可能な社会」「健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会」「多様な働き方・生き方が選択できる社会」を目指すとしています。

政府は、2020年までの数値目標も示しています。いくつか例を挙げると、年次有給休暇の取得率を現在の47.6%から70%へ、週労働時間60時間以上の雇用者の割合を2008年の数値(10%)の5割減とすること、などが掲げられています。

 

■ワーク・ライフ・バランスの推進で具体的にどういった効果があるのですか?

WLBの推進は企業、個人、社会それぞれに、さまざまな効果があります。

就業意識の変化は近年特に激しくなっており、仕事と仕事以外の生活を両立できる環境にある会社は若い世代にとって魅力的であり、優秀な人材の確保にもつながります。適切な労働時間で働き、ほどよく休暇を取得することは、仕事に対する社員の意識やモチベーションを高めるとともに、業務効率の向上にプラスの効果が期待されます。社員の能力がより発揮されやすい環境を整備することは、企業全体としての生産性を向上させ、収益の拡大ひいては企業の成長・発展につなげることができます。

他方、長時間労働や休暇が取れない生活が常態化すれば、メンタルヘルスに影響を及ぼす可能性が高くなり、生産性は低下します。また、離職リスクの上昇や、企業イメージの低下など、さまざまな問題を生じさせることになります。社員のために、そして企業経営の観点からも、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進はメリットがあります。

 

■県内企業でのワーク・ライフ・バランスの取組は?

電気関連の部材の製造・販売を行う大手A社では、会社の発展には、社員の健康や幸せといった社員満足度の向上が必要であるとの思いから、WLBの実現に向け誰もが働きやすい職場づくりに取り組んでいます。その一環で、育休をはじめとした各種制度の整備を進めており、女性の育休取得率はほぼ100%となっています。また、社員の大半を占める男性社員に対しても、周知・啓発を実施した結果、男性社員初となる育児休業取得者も誕生しました。その後も、女性で利用実績のあった育児短時間勤務を男性が利用するなど、波及効果が出ています。

設備の改善による業務効率化や複数人が同じ仕事スキルを持つことで仕事内容の平準化にも取り組んでおり、有給休暇の取得日数も増加しています。

進出企業 であるB社では、全社でWLBやダイバーシティに関する取組を実施しています。毎年5月、10月をWLBの強化月間と位置づけ、有給休暇の取得促進やノー残業デーの設定など、部署ごとに目標を定め、WLBへの取り組みを実施しており、残業時間の削減や有給休暇の取得率の向上等に繋がっています。

また、同社では2014年10月より事業所内保育所を設置し、子育て世帯への育児支援にも取り組んでいます。従業員の約9割が男性ということもありますが、利用者の多くは男性社員のお子さんで、同社は男女に関わらず育児支援を行うとの考え方で諸施策を実施しているとのことです。

県内大手小売業のC社では、今ほどWLBが取りざたされる以前から、働きやすい職場環境の整備を実施してきました。背景には、過去に女性従業員が結婚や出産といったライフステージの変化に伴い退職を選ぶことが多く、せっかく育てた社員のスキルやノウハウが会社に蓄積されないといった課題がありました。スキルやノウハウを身に着けた社員がどうすれば退職せずに済むかを考えた結果、柔軟な働き方への取組や仕事と家庭を両立するために、育児休業制度や育児短時間勤務制度などの各種制度をいち早く導入しました。導入当初は様々な問題もありましたが、現在では企業風土として働きやすい職場環境が根付き、結婚や出産に伴う退職は殆どなくなった結果、優秀な人材の確保にもつながっています。

 

■実際には、従業員の少ない中小企業ではワーク・ライフ・バランスの取組は難しいような感じがしますが…?

確かに、従業員の少ない中小企業では、短時間勤務や有給取得時の代替要員確保が難しいといった課題はあるかと思いますが、経営者の意思決定が会社に反映されやすい部分もあります。経営者の方が意識的に取り組むことで、中小企業でもWLBの推進は可能であり、優秀な人材の確保や生産性の向上といったことにも繋がるのではないでしょうか。

また、大分労働局では県内の企業向けにWLBに関する情報提供や訪問活動といった取組を実施しており、中小企業に対して労働時間をはじめとする労務管理・就業規則等に関するアドバイスを行う「働き方・休み方改善コンサルタント」の無料派遣も実施しています。こうした取組を活用することで、WLBに取り組みやすい環境づくりにつながるのではないかと考えます。

 

■大分市でのワーク・ライフ・バランスの取組は?

当研究所では今年度厚生労働省から委託を受け、大分市とも連携し「地域の特性を活かした休暇取得促進に向けた環境整備事業」を行っております。この事業は七夕まつりや生活文化展といった地域のイベントに合わせて有給休暇を活用し、お祭りなどに参加する時間、家族と触れ合う時間、自分のための時間を作り、WLBの実現を図るものです。

当研究所のHPでは本事業のパンフレット等も掲載しております。また、厚生労働省の「働き方・休み方改善ポータルサイト」では、働き方・休み方の見直しや改善につながる各種情報が掲載されておりますので、是非ご活用ください。

大分市内の企業や従業員、市民の方々にぜひご協力、ご参加いただけますよう宜しくお願い致します。

(おわり)