海原みどり 10/17(金)

NO.73「心療内科を訪ねて -心が痛み、心が治す-」
著者:夏樹 静子
出版社:新潮文庫
自称「ラジオタレント」の永六輔さんが、長寿番組の「誰かとどこかで」「土曜ワイドラジオTOKYO」の放送で話したこと、各地の講演での言葉を活字としてまとめたもの。ひとつひとつ小さな3年間、腰の激痛に悩まされた作家・夏樹静子さん。

最初は、椅子に腰掛けると鈍痛を覚える程度だったのだが、次第に異常な全身の倦怠感に、そして、立っていることはおろか横になっても背中にかけて激しい痛みに襲われるようになり、身体をエビのように曲げてジッと横たわっている以外に何もできない。どんな鎮静剤、座薬、注射も全く効かない。
大学病院の整形外科、内科、婦人科、神経内科で精密検査をしても、これといった疾患は見いだせず。鍼灸、気功、整体、カイロプラクティック、マッサージ、足の裏を揉んだり、低周波をかけたり・・・と、あらゆる民間療法を試してみるが、効果なし。

こうして2年半が経ち、生きる希望を失いかけた頃、知人の紹介で心療内科の医師の訪問を受け、“典型的な心身病”だと告げられる。腰の激痛は、心因で起こるなんて?半信半疑の夏樹さんだったが、心療内科への入院を決意し、絶食療法やカウンセリングによって、劇的に回復。97年にこの自身の体験を記録したものを「椅子がこわいー私の腰痛放浪記」として出版。すると、大きな反響があり、心因性疼痛に悩む人々からの相談や、テレビ・雑誌のインタビューも相次ぐ。

この本は、そうした過程を経て、さまざまな心身症に悩む14人の患者さんに彼女自身がインタビューしてまとめたルポルタージュである。
潰瘍性大腸炎、拒食・過食、毛髪脱毛症、喘息、過敏性腸症候群、斜頸・・・・・。
これらの病気で痛みと闘っている人は、その発症や経過で心理的要因が大きいということを、改めて感じさせられる。例えば、家庭不和、会社のストレスや過労、上昇志向と職場の軋轢・・・。

「心療内科」は各病院に開設されてまだ日も浅い診療科目だが、ストレス社会において今後ますます心身症に悩む患者さんは増えていくだろうから、心のドクターを求める機会も多くなるであろう。
信頼できるドクターとの出会いで心を開き、痛みから解放される人が一人でも増えればよいと思う。
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