海原みどり 10/27(月)

NO.76「おいしいおはなし 〜台所のエッセイ集〜」
著者:高峰 秀子
出版社:光文社文庫
しのぎやすい気候となり爽やかな日和が続くと、食欲も増してくる。太りすぎを気にしながら、旬の野菜や魚、フルーツにスイーツに舌鼓。何を食べても美味しい。
そして、この本を読んだ後は、「健康で美味しく食べられるということは、何よりもしあわせなことである」と感じた。
昭和の大女優である高峰秀子さんは、映画監督の松山善三氏と結婚するにあたり、一人前の主婦になろうと決意する。なにせ子役から大スターとなった彼女は、それまで家事など一切したことがないし、花嫁修業をする時間もない。そこで、考えた。
仕事柄、行くことも多いレストランや料亭で味を覚え、なるべく調理場に近いカウンターの席に座り、コックさんや板前さんの手元を観察。そして、自分で真似が出来そうな料理は作り方をメモして、家に帰って早速作ってみてレパートリーを増やしていったそうだ。(普通、私たちはレストランに行っても「あー、美味しかった!!!」で終わるが、料理上手な人はソースの味や調理法などをしっかり覚えて帰って、自宅で再現してみるらしい。やはり意識が違う)
また、いろいろと苦手な食べ物があり偏食の夫のために、献立も工夫するようになり、料理の腕も、めきめき上がったとか。
高峰さんいわく、「食べ物に情熱をかたむける人は、仕事に対しても猛然と情熱を燃やす人だ」。
そんな彼女が選んだ(おいしい文章がいっぱい詰まった)名文家たちの食べ物に関するエッセイ集。
「食わらんか」向田邦子、「仏陀のラーメン」沢木耕太郎、「食べることは排泄と同じ」北野武、「台所育ち」幸田文、「天ぷらそば」池部良、「B級グルメ考」山田風太郎、「お不動様とマヨネーズ」佐藤愛子、「居酒屋の至福」川本三郎・・・・などなど。
それぞれにクスッと笑えたり、じーんと感動したりと、味わい深いエッセイだった。
特に面白かったのは、カレーライスの時には20種類近くの薬味を手作りするのでテーブルの上がお花畑みたいになるという宇野千代さんのエッセイ「私のカレーライス」。
また、楽屋にはいつも手作りの3段重ねのお弁当を持参していた女優・沢村貞子さんの文章からは、おかずのいろどりや匂いまで伝わってくるようで、お腹がグーと鳴った。

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