大分の古代美術



金銀錯嵌珠龍文鏡

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金銀錯嵌珠龍文鏡 一面
東寺ダンワラ古墳出土
東京国立博物館
鉄製
径二一.一cm

中国漢代
重要文化財

鉄製。鏡背の文様は金銀錯<きんぎんさく>の龍文を基調とし、各所に玉を嵌装<がんそう>したもので、破損により全体の三分の一を遺すに過ぎないが旧状はよく窺える。
 四葉座の鈕<ちゅう>を中心におき、葉<よう>間には「長」「宜」「」「孫」の四文字を金の篆<てん>体で表わす。四葉座の周縁は金を外に銀を内にした二条の線をひき、内には金銀の細線で渦雲文を入れ、中心には杏仁<きょうにん>形のガラス玉を嵌入<かんにゅう>するが、ガラスの色調は風化により定かではない。主文様は著しく便化した大小の蛟龍<こうりゅう>を巧みに絡み合わせた文様を金象嵌で表わすが、ところどころに銀を加え、また龍の目や体躯の節々に緑色の珠玉を嵌入して変化をもたせ、図様全体の調子を整えている。
 文様の細部は「長」銘下には斜右向きの龍首を、「宜」銘下には左側面を向いた龍を相対させている。前者は右半を失ってはいるが、渦巻状の双画を表わすものと認められ、後者は大きな角を振り立て、共に口を大きく開き、歯牙をむき出している。前者の左眼には珠玉が嵌入されており、後者の右眼には僅かながら緑色珠玉の破片が付着しているのでこれらの龍には珠玉が嵌入されていたことが推察される。小龍は「長」銘右下に配された双角を振り立てている斜左向きのものが最もよく保存されている。両眼には緑色の珠玉を入れ、体躯には魚鱗様の文様が表わされている。文様の主要部分は金線の象嵌によるが、各所に銀線を併用して抑揚を付している。即ち、大きな龍の角先端や、爪には銀も多く用い、唇には銀を主とし、僅かに金を加え、あるいは小龍の鱗の中の斑点を銀で表わす等である。また龍の体躯の節々には現在数箇の緑色の珠玉を遺しているが、珠玉の離脱した痕と覚しい箇所には赤漆を充填したと思われるところがある。珠玉に色彩的な効果を加えるための技巧であろうか、鏡縁には幅広い金象嵌でからみ合う龍文の変形した渦雲文をめぐらし、図様全体をひき立てさせている。
 本鏡の出土した東寺古墳の詳細は明らかではないないが、この遺品は中国漢代の製作になる精緻な舶載鏡で、わが国では唯一の出土品である。これが国内から出土したことは重要で、往時の対外交渉を考えるうえでも貴重な資料である。なお、この鏡の伴出品として貝製雲珠、鉄製貝装辻金物<つじかなもの>が共に伝世している。
(三輪 嘉六)
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