温泉熱利用 ( おんせんねつりよう)

地熱発電と花卉栽培

 地下からの噴気熱を発電や施設園芸、暖房などに利用すること。わが国は環太平洋火山帯に位置するため、地熱資源が豊富で、全世界の10分の1を占めるという。とくに 温泉 の豊富な本県は、全国一の地熱源を誇る。地熱エネルギーは、県内総エネルギーの期待可採量の62%を占めるとされる(昭和60年版『別府市誌』)。 地熱 は別府市 湯布院町 九重町 天瀬町 庄内町などに多い。別府の噴気熱利用は、いつのころからか明らかでないが、すでに寛政時代(1789〜1800)には、野菜や麻を煮たり、蒸したりしている(『別府温泉誌』)。いまなお、 鉄輪(かんなわ)温泉 や 地獄 では、炊事用や卵ゆがき、トウモロコシ蒸しなどに利用されている。
〈地熱発電〉
  地熱発電 の試みは、大正7年(1918) 山内万寿治 が、別府町の 坊主地獄 付近をボーリングし、噴気を得たことに始まる。鉄輪の高橋廉一がこれを譲り受け、 東京電灯 鰍ヨ発電機の設置を依頼した。14年11月、東京電灯の研究所長 太刀川平治 が1.12KWの発電に成功、わが国地熱発電の端緒を開いた。発電実験は、昭和2年(1927)までつづけられている。戦後の電力不足は、地熱発電への関心を高めた。22年秋、大分県電力危機突破協議会 別府市 商工会議所は、商工省地熱関係委員 小田二三男 を招いて、調査を依頼した。この結果、商工省資源調査所は、小田を中心に、23年3月から 白滝地獄 付近でボーリングを開始、深さ110mで噴気に成功した。市民は温泉を枯らすと反対したが、12月には150vの試験発電に成功した。24年度から、工業技術庁が本格的な開発に着手、26年7月100kWの発電に成功、10月から 九州電力 鰍ニ共同研究を始めた。
 工業技術庁は、26年2月から野矢 大岳(おおだけ)地区(九重町)の地熱調査を行い、27年2月、野矢地区で3,000kWの発電を目標にテストボーリングを始めた。また、九州配電(九州電力)も24年ごろから大岳 八丁原(はっちょうばる)地区(九重町)で地熱開発を進めたが、水分が多すぎるため、31年に中止した。41年9月、ニュージランドで開発された水分と水蒸気とを分離する方法を採用して、 大岳発電所 の建設に着工した。42年8月、出力1万1,000kWの発電所が完成、営業運転を始めた。ついで52年6月、 八丁原発電所 も営業運転に入る。55年11月には出力5万5,000kW、全国最大規模となる。さらに、平成2年6月、八丁原発電所2号機(5万5,000kW)が完成。県内の総地熱発電量は12万2,500kWになり、世界第10位にある。なお、別府の 杉の井ホテル は、56年から地熱を自家発電(3,000kW)のほか、室内の冷暖房などに利用している。通産省は、49年から サンシャイン計画 でクリーンエネルギーの研究開発に着手、53年8月、大規模な地熱発電所環境保全実施調査地として、豊肥地域(九重 久住 熊本県 小国(おぐに) 南小国の4町)を指定した。58年8月、九重町でわが国初の地下3,000m級大規模深部地熱調査井の掘削を開始、翌年6月噴出試験に成功した。さらに、59年10月九重町地蔵原地区でも3,000m級調査井の掘削を始めた。また、 出光(いでみつ)地熱開発 鰍焉A九重町滝上地区で大口径地熱調査井の噴出に成功するなど、九重町の地熱開発は盛んである。
〈農業への利用〉
 温泉熱を利用した野菜や 花卉(かき)の促成栽培は、明治37年(1904)、別府町の甲斐大蔵が手がけたのが初め。昭和9年(1934)ころ、温室の経営は 麻生農園 高橋農園 野口蔬菜園芸組合 など40戸、1,000坪に広がった。 茄子(なす) 蕃茄 芽芋の軟化(赤芽芋) 芽生姜(めしょうが)などが主であるが、麻生農園ではメロン トマト キュウリなど、当時では高級野菜を栽培している。また、昭和の初め、亀川の 丸北 孵化(ふか)場 では、ヒヨコの孵化に温泉熱を利用、毎年15万羽を出荷したという。大分県は、温泉を農業生産と観光施設に利用するため、昭和31年、別府市鉄輪に 温泉熱利用農業研究 を設立した。初め 十万地獄 の熱源を利用していたが、31年所内に噴気井を掘削、58年5月、 大分県温泉熱利用花卉園芸試験場 と改称した。研究温室や大型の観賞温室には、洋ラン サボテン バナナ ヤシなどの熱帯植物が、植物見本園には、桜 ツバキ ツツジなど1,500種の庭園樹が植えられている。優良品種の育成、花卉 熱帯植物の増殖などの研究が進められ、とくにカーネション 花ショウブの品種改良、 豊後ツツジ の開発は有名。現在、温泉熱利用の花卉 蔬菜の栽培は、各温泉地にも見られるほか、スッポンの養殖も行われている。九重町泉水地区では、 九州電力 の掘削した深度1,300mの調査井から噴出する蒸気を河水と熱交換し、 県立九重少年自然の家 とコミュニティセンターのが暖房と湯場に、5戸の農家がバラの温室栽培に利用している。外に天瀬町のバラ、湯布院町のシシトウ ミニトマトなどが知られる。
 参考文献 『別府市誌』
[河野 昭夫]

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