温泉変質 ( おんせんへんしつ)
地獄の釜が岩を変えた
大分県は県北中部を中心として豊富な地熱エネルギーをもち、別府 湯布院などの有名な 温泉 地 地獄 地帯が分布している。その温泉や熱水は地獄の釜が岩を変えたように周辺の岩石を大きく変質させ、独得の景観を作ったり、 湯の花 などの温泉生成物や温泉沈 澱(でん)物を作りだしてくれる。
〈温泉変質とは〉
温泉水 (高温熱水)が地下で高温の熱水状態を保つとき、この高温水は接触する岩石に化学的変化をあたえ、母岩をいろいろな程度に変質させる。このことを温泉変質という。この過程でいろいろな種類の温泉水や生成物が作られる。
〈温泉変質の過程〉
熱水 は岩石と接触 反応して岩石を変質させる。特に噴気中の亜硫酸ガス( )や硫化水素( )が地表近くの地下水と反応して強酸性の熱水(温泉水)になる。この温泉水は岩石のアルカリやアルカリ土類元素 アルミナなどを溶かしだし、最後に珪酸( )のみがのこる。別府西方 伽藍(がらん)岳 の 珪酸白土 はその例である。またその西側の 塚原温泉 は酸性温泉の代表的なものである。また 明礬(みょうばん)石 や 石膏 などの硫酸塩鉱物をともない、粘土鉱物( モンモリロナイト や カオリナイト )もともなっている。酸性の温泉水(熱水)の場合は以上のような様相を呈するが、 地熱開発 などにともない、地下深くまでの温泉変質(熱水変質)の過程や構造が明らかになってきている。たとえば岩手県の松川地熱地帯では、活動の中心から明礬石帯 カオリナイト帯 モンモリロナイト帯 緑泥石帯に分類されることが報告されたり、ニュージーランドのワイラケイ地熱地帯では深度方向の変質鉱物の帯状区分が報告されている。これらは熱水のPH(水素イオン指数)によっても左右される。別府の観光の名所になっている地獄地帯では噴気や熱水による温泉変質の作用によって作られた独得の地形がみられ、温泉沈澱物の生成が活発である。
〈温泉変質による生成物〉
熱水は高温であるとともに、多くの塩類を含む水溶液であり、地表へ到達までの間に母岩を変質させ、鉱床を形成したりする。金 銀 銅などの鉱床もこの作用によって作られるものがある。また別府周辺の 白土鉱山 はこれらの変質作用によって 安山(あんざん)岩 類が変質し、ほとんどシリカからなる地域を採掘している。別府北部には多くの白土鉱山があったが現在は塚原の伽藍岳山麓で採掘が続けられているのみである。別府特産の湯の花も温泉作用による生成物である。また、これらの温泉変質によって粘土鉱物が作られ、それらと地下水の作用によって地すべりが発生することがある。このような地すべり地形は明礬地区でもみられる。
〈湯の花〉
別府明礬地域の湯の花小屋のわらぶきの風景ははこの地域の独得の景観を作っている。この湯の花は噴気地帯で、青色粘土(鉄イオンやアルミニウムイオンを含む)に硫化水素を含む蒸気を通して作られた鉄やアルミニウムの硫酸塩である。その他で一般に湯の花とされるものは温泉沈澱物で、硫化水素が酸化して硫黄が遊離してできた淡黄色や乳白色の硫黄華が多い。
〈温泉沈澱物〉
温泉から沈澱したもののすべてを含むが、一般的には地下で熱水溶液から分離したものは別に考え、地上 湧出(ゆうしゅつ)温泉水からの沈澱物をいう。地上での温度 圧力の低下やガス成分が逃げ出すために温泉水にとけていたいろいろの成分が種々の沈澱物を作り出す。 温泉華 とか スケール ともよばれる。これらの温泉沈澱物は温泉の周囲に独得の景観を作りだし、一種の観光資源ともなるが、一方温泉湧出孔をふさぎ、温泉利用の障害ともなっている。温泉沈澱物のうち代表的なものの一つは 珪華(けいか) とよばれるシリカ質沈澱物で、弱アルカリ性の高温泉で観察される白色沈澱物である。シリカ(珪酸)は高温ほど水に溶けやすい性質があり、湧出後冷やされると、温泉水はシリカ過飽和になって、コロイドが析出し沈澱する。別府 白池地獄 や 血の池地獄 などで珪華がみられた。最近は高温 沸騰泉の開発などのためにシリカ沈澱物に対する対策が行われている。また、 石灰華 とよばれる炭酸カルシウムの沈澱物も温泉地帯ではよくみられる。炭酸カルシウムは温度が低いほど水に溶けやすいのであるが、炭酸ガスが温泉水からにげだすことにより、炭酸水素イオンの一部が炭酸イオンとなりカルシウムイオンと結び付いて析出沈澱する。ほかに、 鉄華 とよばれる酸化鉄を主とする褐色の鉄質沈澱物、別府観海寺の 三ヶ月温泉 でみられた石膏(硫酸カルシウム)の沈澱物、放射能を示す 北投石 などがある。
[竹村 恵二]
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