大分地方裁判所 ( おおいたちほうさいばんしょ)
熊本地方裁判所から分離、支庁を開設
〈県官が裁判官を兼ねていた時代〉
我が国の裁判制度の創設は、明治5年(1872)4月、新政府の司法卿に任ぜられた江藤新平(1834−1874)らにより始められた。この時期の裁判権は実質上、地方庁(府県)が把握し、行政官である地方官(府県官)がこれを行使していた。したがってこれが司法省(同4年7月設置、昭和23年法務庁、同27年より法務省)へ吸収され、全国的に統一されることは至難の課題と目されていた。わが国における最初の裁判所構成法ともいうべき「司法職務定制」(太政官達)が定められたのが同5年8月3日。この職制は、全22章108条から成る大部のもので、警察権をも含め司法に関する事務はすべて網羅していた。例えば、府県には「裁判所」とともに「検事局」が置かれ、検事が 捕亡吏(ほぼうり)( 邏卒(らそつ)、のち巡査)の業務を管掌する一方、司法省には警保寮が置かれて警察を統一的に把握していた(同6年11月、内務省の設置で警保寮を同省に移管、自来、警察行政は内務省の所管となる)。この職務定制により裁判所は機構が整備され、司法省裁判所を基軸に、同臨時裁判所 同出張裁判所 府県裁判所 区裁判所の5種に区分されていた(『日本法制史』)。
つづいて同8年8月14日、司法省裁判所に代わる「大審院」(司法権行使の最高機関、現在最高裁判所)が元老院とともに新たに設けられるに及んで、司法行政の官 衙(が)である司法省と実務を行う裁判所とが明確に分離をみた。また、この改革で、東京 大阪 福島 長崎の全国4か所に上等裁判所(のち控訴院と改称)が置かれ、長崎上等裁判所が九州管下7県の訴訟事務を管掌した。翌9年9月、府県裁判所に代わり地方裁判所に名称が改められるに及んで、地方官が裁判官を兼任する制度が 漸(しばら)く廃止されることになった。こうして、この時、大審院―上等裁判所(控訴院)―地方裁判所―区裁判所の段階的機構が整備されたのである。但し、地方裁判所が新たに設置されたのは全国で23府県、九州では長崎県を除き、熊本県と鹿児島県の2県のみであった。他県に設置されなかった理由は二つ、一つは県の財政難、他は「(開庁ニハ司法)事務ニ熟知シタル判事補 寡少(かしょう)ニシテ事務渋滞ヲ生ズ」るという裁判官不足にあった。
〈熊本地方裁判所大分支庁開設〉
以上のように、大分県には正規の裁判所が置かれず、 廃藩置県 (同4年)以降、県官が裁判官を兼ねて県聴訟課で民事 刑事の訟獄事務を 掌(つかさど)っていたのである。そのため同9年9月27日、熊本地方裁判所長 南部 甕(かめ)男(六等判事)は長崎上等裁判所長 伊丹四等判事を通じ、ときの司法卿 大木 喬任(たかとう)に対して熊本管内に「支庁区裁判所開庁(増設)」の上申書を提出、同年11月18日これが認められた。直ちに大分 県庁 内に「熊本地方裁判所大分支庁」が開庁され、2年後の同11年、大分町外堀通りに庁舎を新築移転した。支庁開設と同時に設置をみた県内の区裁判所は、府内(大分) 佐伯 岡(竹田) 中津 豆田(日田)の5区裁判所、のち同14年6月30日に杵築区裁判所が増設されている(熊本県資料『熊本地方裁判所九十年誌』)。
〈大分地方裁判所〉
明治13年公布、同15年施行の治罪法(同23年刑事訴訟法公布と同時に廃止)は裁判所の構成を再び改め、同14年10月九州管内の長崎 熊本 鹿児島の3地方裁判所を廃止、その名称を始審裁判所と改めた。同15年1月、大分支庁は 大分始審裁判所 として大分 佐伯 竹田 杵築の4管内、 中津始審裁判所 として中津 日田の2管内をそれぞれ分担し、「治安裁判所」(のち「重罪裁判所」)として当時の政情不安な治安維持に当たった。同18年10月1日庁舎完成、位置は大分市畦無2,552番地。敷地面積2,825坪、木造瓦葺二階建て、建坪578坪、工事費は5万4,739円。同年太政官制廃止、内閣制の採用とともに独立の裁判所官制が施行され、漸く裁判所機構も確立をみた。さらに同23年、裁判所機構法が施行されてからは法整備が進み、その名称も「大分地方裁判所」として新たに出発、以降、第二次世界大戦に至っている(大分地方裁判所『沿革誌』)。
〈戦後〉
昭和20年(1945)7月16日夜半の 大分大空襲 により、当裁判所も焼失。同22年5月に現在地(旧岩田女学校所在地)に新築移転、同年の新憲法に基づく地方裁判所として新たな出発をする。庁舎も同39年(1964)3月につづき、同61年(1986)3月 大分家庭裁判所 を併せて増改築し、現在のような新装をみた。現在(平成2年)、管内には中津 杵築 佐伯 日田 竹田の5支部が置かれ、これらを含めて大分地方裁判所に勤務する判事は11人、判事補5人、一般職員は136人である。昭和63年度における訴訟事件数は、民事事件として新受1,476件、既済1,541件、未済1,339件、刑事事件として新受930件、既済933件、未済311件、となっている。なお、所在地は大分市荷揚町7番15号。
[大野 保治]
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