パキスタンのカラコルム山脈のふもとに、不老長寿の村として有名な美しい里、<フンザ>がある。あんずの花咲く桃源郷で、映画「風の谷のナウシカ」のモデルになった地でも、あるそうだ。
昨年読んだ、宮本輝の小説「草原の椅子」で、主人公・遠間は、もう一度、人生をやり直そうと、このフンザを目指す旅に出る。社会や世の中に絶望しても、美しいものを見て感動する心を忘れない、心根のきれいな人になりたい・・・というメッセージを込めた内容で、まっすぐに生きることの大切さを教えてくれる良質の小説である。
「草原の椅子」を読んで、いつか<フンザ>に行ってみたいと常々思っていたので、この本「鎮魂のカラコルム」の裏表紙の解説で、<フンザ>の文字を見つけた時に、すぐにもページをめくりたい衝動に駆られた。
「鎮魂のカラコルム」。タイトルから推測出来るように、山仲間の霊を慰めるために、パキスタン・カラコルムを旅した記録である。
筆者は、74歳の精神科医。39年前、東大遠征隊の登攀隊長として未踏峰キンヤンキッシュ登頂を目前にして、隊員を亡くしてしまう。友が眠る地にもう一度立ち、現在の自分を報告したい・・・という長年の念願をかなえるべく企画した旅であった。
苛酷な自然と向き合いながらの登山、土地の人々との触れ合い、そして旧友(ポーターたち)との再会や旅をサポートしてくれた日本人女性のあたたかい人柄に触れたり、まさに<旅は人生である>と感じさせてくれる一冊である。
また、気骨ある筆者の考え方に共感する箇所も多い。
それにしても、“孤高”とか“崇高”という形容詞は、まさにクライマーのためにある言葉だと、この本を読んでいて実感。
日本人の品格、今失われつつある民族の誇りだとか、人間の尊厳について考えさせられた。 |