映画「泥の河」「伽耶子のために」「死の棘」「眠る男」「埋もれ日」を撮った小栗康平監督の自伝的エッセイ。
小栗作品は、娯楽的商業主義の映画ではない。
ドラマティックにストーリーが展開し、ハラjラドキドキしたり、笑い転げるようなこともなく、淡々としている。どちらかといえば地味。時に、テーマも重い。
それでいて、映画館を出た時に走馬灯のように映像が蘇り、しみじみと<いい映画をみたなあ>と実感するのである。
デビュー作「泥の河」は、特にいい。宮本輝の小説を映画化したもので、昭和30年代前半の大阪で船上生活をする母子と、うどん屋の息子の交流と別れが丁寧に描かれていて、感動する。
うどん屋ののぶちゃんが「きっちゃ〜ん」と泣き叫びながら舟を追うラストシーンは、今、思い出しても涙が出る。子役ももちろんだが、田村たかひろ、加賀まり子、藤田弓子ら名優の演技に見せられた一本である。
長い助監督時代を経て、監督になってからも、資金の不足などで作品数は、そう多くない。本書を読んでいて、決して平坦な人生でなかっただけに、社会的弱者を見つめる温かい眼差しを感じる作風なのだと納得した。
そろそろ新作も観たいものだ。 |