「寂聴さん とっておきの古都の寺社、そして、行きつけのお店。ひと味ちがう、
京都の旅案内」と書かれた帯に惹かれて、手に取ってみた。
パラパラとページをめくると、まずふんだんに掲載されている写真を見るのが楽しい。
清水寺・銀閣寺・天龍寺・三千院などおなじみの京都のお寺をはじめ、
紅葉の寺として有名な高山寺・皇室の菩提寺である泉涌寺・・・・などの歴史ある寺社、
また、寂聴さんが好きな和菓子屋さんや割烹、フレンチの店の紹介などもあって、
<いつか行ってみたい>と思いながら、肩が凝らずに読めるエッセイである。
80歳を過ぎても、なお精力的に執筆活動をしている寂聴さんの元気の源は、
朝食のカスピ海ヨーグルトや赤ワインに浸した乾燥ブルーベリー、
時々むしょうに食べたくなるステーキ!とかく仏門に入っていると精進潔斎をして禁欲的な生活をしていると思いがちだが、寂聴さんは美男子を見るのが好き、そして好物はステーキだそうで、「ああ、私と同じだ・・・」と親近感をもってしまう。
ユーモアたっぷりの平易な語り口で講話したり、こんな俗なことをおおっぴらに書くところも寂聴さんの魅力。(もちろん、日々ちゃんと修行もされています)
この本の中で、小説「女徳 じょとく」のモデルになった高岡智照尼との思い出も語られる。
智照尼は、その昔は大阪一の売れっ子舞妓だったのだが、恋愛のもつれから自ら小指を切って社会を騒がせ、その後、実業家と結婚して外国に渡るも破局。
後年、仏門に入り、京都・嵯峨野の祗王寺の庵主としてしずかに余生をおくった方である。
そんな波乱万丈の人生だった智照尼は、若い頃は誰もが振り向くような美人で鼻っ柱が強かったらしいが、晩年に寂聴さんと談笑している姿は、穏やかで、優しく、とてもいいお顔をしている。
人生の地獄を見て、修羅場をくぐってきたその経験をきれいさっぱりと洗い流して、
小さな草庵でどんなことを感じていたのだろうか。 |