←アナ日記トップに戻る(海原みどり)
私の読書日記 <No.27>
4月10日(木) くもり
「蜃気楼」
著者:内田康夫
出版社:講談社
テレビドラマでもおなじみ、フリーのルポライターで名探偵・浅見光彦が難事件を
解決する人気ミステリーシリーズ。

今回は、富山県の魚津市が舞台。「旅と歴史」の藤田編集長の依頼で、<富山の置き薬>の歴史と効能と実態をルポすることになった光彦は、取材のため魚津に向かう。4月14日、この日は富山湾にその年初の蜃気楼が出た日。たまたま訪れた「埋没林
博物館」で職員の梶川優子に蜃気楼の説明を受けた後、光彦は、配置業販売業者(富山の薬売り)をしていた彼女の祖父は京都府舞鶴市で死体となって発見されたことを知る。自殺なのか?他殺なのか?そして、東京で第二・第三の殺人も発生し捜査が難航する中、光彦の推理が冴える。

蜃気楼とは、春から初夏にかけて、晴れて暖かく風が弱い日に富山湾の沖合いに発生する現象で、光の屈折によって、はるか水平線上にある対岸の建物や船が空中に浮き上がって見えるというもの。
裏切られても昔の恋人の出世を願い、愛する人を守るため自らの命を犠牲にした女性。苦労してやっと手に入れた社会的地位を失いたくないために、次々と人を殺めるはめになった男・・・・。彼らの儚い夢は、蜃気楼のように消えていく・・・。

この浅見光彦シリーズの人気の秘密は、なんといっても彼のキャラクターによるところが大きい。33才、二枚目。未だ独身で警察庁刑事局長である兄一家の家に居候の身。ふだんは気が優しい好青年だが、事件に首を突っ込むと<悪は憎むは、人は憎まず>の精神で正義感・倫理観に燃えて名探偵ぶりを発揮。特に、社会的地位を利用して自らの私腹を肥やすために一般市民を犠牲にする犯罪は黙っていられない・・・という点が共感がもてる。これは、作者である内田康夫氏が小説を書くポリシーでもある。
 いつも飄々として冗談ばかり言っている軽井沢のセンセ=内田康夫氏が、このほど
日本ミステリー文学大賞を受賞したと新聞記事で知った。
「賞とは無縁の作家」とご本人が常々口にしていただけに、一ファンとして今回の受賞は大変嬉しい。