三谷幸喜の日常を綴ったエッセイ「ありふれた生活」シリーズ5。
今回は、彼が監督した3本目の映画<THE 有頂天ホテル>を製作していた2005年から2006年の日々が、ユーモアたっぷりに描かれる。
<THE 有頂天ホテル>製作にあたってのエピソードとしておもしろかったのは、映画の舞台となったホテル「アバンディ」のセットについて。日本で一番大きなスタジオでロビーラウンジのセットを組んだらしいのだが、スクリーンで見ていてもとてもゴージャスで素敵だなあ・・・と思っていたら、美術担当の種田さんという方(「不夜城」や「スワロウテイル」などのセットを作った人)が材料にもかなりこだわって完成させたという。美術さんのせっかくの大作を上手に画面に生かすことも監督の務め。
三谷監督は、このロビーでのシーンは細心の注意を払って撮影したのだが、クランクアップも近づいた頃、「監督、ここの壁の石はヨーロッパの職人を呼んで特別に・・・」「どうしてもっと早くに教えてくれなかったの。知っていたら撮り方も変わっていたのに」「監督悩ませたくなかったので黙ってました。セットに関しては、まだまだ話していないことが山ほどあります」。愕然とする三谷氏。映画魂ここにあり!という感じだ。
三谷さんは、歌舞伎役者・松本幸四郎一家(松本紀保さん・市川染五郎さん・松たか子さん)と仲が良い。気取らない幸四郎さんの人柄が感じられる話もおもしろかった。
夫婦ともに舞台や映画で忙しくてイヌや猫のペットたちにかまってやれなかったこの時期に、動物たちがみせる欲求不満の表情もほのぼのしている。 |