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ヴィンセントが教えてくれたこと

セオドア・メルフィ監督は、これが初監督とは思えないほどドラマのツボをきっちりと押さえた型破りのハートフルな作品に仕上げている。
なるほど、この内容であったら、北米でひっそりとたった4館で封切られたにも関わらず、見た観客の口こみ情報から端を発して、最終的には2,500館への大ヒット作品となったことが納得される内容となっていた。この事実から興行する側よりも、観客の方がこの手の映画に対して確かな見る目を持っていたことがわかる!という痛快な出来事として記憶される映画としても、この作品は残るだろう。
ブルックリンのボロ一軒家で猫と暮らすヴィンセント・マッケンナは、常に酒浸りで競馬で一攫千金を狙っては失敗し借金が積み重なる、という自堕落な生活を送っている老人だ。そんなヴィンセントの隣に、シングルマザーのマギーと12才の息子オリヴァーが引っ越してきた。背が小さくやせっぽちのオリヴァーは、地元のカトリックスクールに転入初日にいじめっ子に携帯電話と家の鍵を奪われ、やむなくヴィンセントに電話を借りたことから、マギーはヴィンセントにシッターのバイトを依頼することになる。偏屈で毒舌家のヴィンセントと、賢くて機転の利くオリヴァー、祖父と孫ほどの年の離れたふたりの付き合いがはじまった。愛猫のフィリックスと妊婦のロシア人ストリッパーのダカ以外は寄せ付けないヴィンセントだったが、オリヴァーとは不思議とウマが合った。そしていじめっ子の撃退法を教えたりするのはいいが、オリヴァーをバーや競馬に連れて行ったりと、マギーのアタマが痛くなるような付き合いになってしまう。
それが原因で父親との親権問題でマギーは不利になってしまうが、オリヴァーはヴィンセントが認知症で入院中の妻を大事にしていることや、ダカへの優しい態度などを見ていて大好きになっていく。だが妻の入院費や競馬の借金などで取り立て屋とのトラブルでヴィンセントは脳卒中を起こし入院する羽目になる。ふたりの間のかけがいのない絆を築きヴィンセントを本当の祖父のような気持ちで愛したオリヴァーは、学校の宿題のテーマでヴィンセントの本当の姿を紹介しようと頑張り始めるが・・・・・。
出だしはちょっと「うん?」と小首をかしげる人が多いと思う。がオリヴァーやマギーとの出会いぐらいから快調にドラマは流れ、ふたりの付き合いの破天荒に笑い共鳴し始め、アメリカが抱えるシングルマザーや孤独老人、人種問題など底辺層の福祉テーマをさりげなく提起しながら、ウェットでなくカラリとしたハートフルな出来に仕上げた内容に観客であるぼくらは笑い泣きながら楽しく見られる作品となっているのだ!
B・マーレイと少年役のJ・リーベラーの演技サイコー!ですよ。
ぼくのチケット代は、2,300円出してもいい作品でした。
星印は、4つ差し上げます。


[ 4 点(5点満点)・ 2300 円(1800円基準)] 5点満点中4点 2300円
衛藤賢史のシネマ教室について…

“映画評論家ではない”衛藤賢史先生が「観客目線でこの映画をどう見たか?」をお話するコーナーです。

星:観客目線で「映画の質」を5点満点で評価
チケット代:観客目線で「エンターテインメント性、楽しめるか?」を評価(1,800円を基準に500円から3,000円)

【衛藤賢史プロフィール】
えとうけんし・1941年生まれ・杵築市出身
別府大学名誉教授
専門:芸術学(映像・演劇)映画史
好きな作家:司馬遼太郎/田中芳樹
趣味:読書/麻雀/スポーツ鑑賞/運動

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