OBS

「大分県内企業のIT活用状況」について

今回は、大銀経済経営研究所の野上諭さんにご出演頂きました。

 

 

 

今回は、「大分県内企業のIT活用状況」についてアンケート調査をされたとのことですが

大分県はもとより、現在国内の多くの企業では人手不足が問題となっています。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、大分県では人口減少が今後も進むと予想しており、人手不足は今後ますます深刻化していくと考えられます。人手不足への対応策の一つとしてIT活用による労働生産性の向上が考えられます。今回の調査では、大分県内企業のIT活用状況をアンケートやヒアリングにて調査し、県内企業のIT活用分野やその目的、活用する上での課題等をまとめました。

 

 

 

県内企業はどういった業務分野でITを導入しているのでしょうか

県内の企業に対して、ITを導入している業務分野を複数回答で尋ねたところ、「経理・会計・財務」が   82%で最も多く、次いで「人事・給与」が60%、「社内の情報共有」が49%の順となりました。どの企業にも必要な「経理・会計・財務」や「人事・給与」といった総務部門でのIT 導入が進んでいることがうかがえました。業種別にみますと、卸売業では「販売」や「仕入れ・調達」でのIT導入が進んでおり、商品の仕入れや販売といった主要業務の部分でIT導入が進んでいることがうかがえました。建設業では「開発・設計」の割合が全体平均を上回っており、設計・製図関連の業務でIT導入を進めていることがうかがえるなど、「経理・会計・財務」と「人事・給与」を除く業務分野でのIT導入状況は業種によって違いがみられました。

 

 

ITを活用している項目はどのようなものがありましたか?

個別項目ごとのIT 活用状況を尋ねたところ、「活用している」が最も多かったのは「自社ホームページ開設」で76%、次いで「インターネットバンキングなど電子決済」が71%、「販売管理・顧客管理・分析」が61%の順でした。一方で、「ビッグデータの活用」や「業務自動化(RPA)の導入」、「モノのインターネット(IoT)の活用」、「人工知能(AI)の活用」、「仮想通貨、フィンテック等暗号化関連技術の活用」などは、「活用している」が1割を下回っており、先進的なIT 技術の活用は一部の企業に限られていることがうかがえました。

 

 

ITを活用する目的や期待する効果にはどのようなものがありましたか

ITを活用する目的や期待する効果を複数回答で尋ねたところ、「業務プロセスの効率化」が70%と最も多く、次いで「社内の情報共有化、技術等の承継」が53%、「業務コストの削減」が49%と続きました。業種別にみると、建設業では他の業種に比べ「人手不足対応」を目的とする意見が多く、人手不足の深刻化が推測されました。また、金融・保険業、小売業、医療・福祉業では、他の業種に比べ「セキュリティ対策の強化」を目的とする意見が多く、顧客の個人情報保護に向けた投資などの義務的な投資が必要になっていると考えられます。

 

 

IT活用の結果、得られた効果はいかがでしたでしょうか

ITを活用した結果、得られた効果を複数回答で尋ねたところ、「業務プロセスの効率化」が63%と最も多く、次いで「社内の情報共有化、技術等の承継」が39%、「業務コストの削減」が35%と続き、目的とする効果と同様の順位となりました。一方で、当初の目的や期待する効果と実際の効果の間には開きがあり、「人手不足対応」や、「業務コストの削減」、「社内の情報共有化、技術等の継承」、「顧客満足度の向上」といった項目は、当初の目的や期待する効果と実際の効果との差が10ポイント以上あり、当初期待した効果を得ることが難しいことがうかがえました。

 

 

IT活用を進めるうえでの課題はどのようなものがありましたか

IT活用を進めるうえでの課題を複数回答で尋ねたところ、「IT関連のコスト負担が大きい」が51%で最も多く、次いで「ITを活用できる人材が不足している」が43%、「情報セキュリティ等のリスク対策が必要」が34%、「IT導入の効果算定が困難」が30%と続きました。業種別でみますと、小売業と製造業では「ITを活用できる人材が不足している」が約5割と多く、人材の不足が大きな課題と捉えていました。金融・保険業では「IT関連のコスト負担が大きい」が9割、「情報セキュリティ等のリスク対策が必要」が6割とそれぞれ全体を大きく上回っており、取り扱う情報のセキュリティ対策も含めたIT活用時のコスト負担を課題としていました。

 

 

ITツールやサービスの導入は、どういった先に相談しているのでしょうか

ITツールやサービスを導入する際の相談先について複数回答で尋ねたところ、「取引業者」や「社内の担当者」といった意見がともに約5割と多く、以下「顧問税理士・会計士」が23%、「同業種の経営者」が17%と続きました。業種別でみますと、医療・福祉業では7割近くが「社内の担当者」と回答したほか、「取引業者」が約6割、「同業種の経営者」、「経営コンサルタント」がそれぞれ約3割と、全体平均を上回っており、複数の相談先を有していることがうかがえました。従業員数別でみた場合、従業員数が50名以下の企業では「社内の担当者」と回答した割合が低くなっており、小規模企業は社内にIT人材がいないことや、IT人材がいる場合でも他業務との兼ね合いからIT導入に時間を割けないことが考えられます。社内にIT活用を担当する部署や詳しい人材がいる場合は、自社に必要なシステムやサービスの導入、運用においても比較的対応が容易と考えられますが、小規模企業を中心にIT人材がいない場合は、取引先にアウトソーシングすることも選択肢の一つと考えます。なお、アウトソーシングを行う場合であっても、取引先に全てを任せるのではなく、改善したい業務についての要望を明確化することや、他社の事例を参考に導入や運用がスムーズなサービスを取り入れるなど、企業ごとの努力は必要となります。

 

 

今回の調査結果のまとめをお願いします。

売上や付加価値拡大を実現するためのIT活用を「攻めのIT」、コスト削減や既存業務の管理等を目的としたIT活用を「守りのIT」とした場合、大分県においては業務効率化などの「守りのIT」に該当する活用が多くなっています。県内企業では、「攻めのIT」について興味を持つ先や、導入を進める先は増えて来たものの、現状は業務効率化などの「守りのIT」の活用がほとんどでした。将来的に「攻めのIT」へ転換するためには、データを収集する仕組みやデータの整理を行うため「守りのIT」の導入は避けては通れない部分です。今後もITの導入は様々な業種で広がっていくと考えられますが、大分県内の企業においては最先端のIT技術にばかり目を向けるのではなく、まずは自社の問題・課題を明確にしたうえで、その解決・改善につながるIT技術やITツールを取り入れることから進めていくべきと考えます。

 

(おわり)